五行詩【白髭】

[五行詩]あごに一本だけ 生えている 白髭を 「さよなら」って 切られて、笑う

五行詩【待つこと三年】

[五行詩]お互いに 変わりなかった わけはない 待つこと三年 街に出る

五行詩【鳥】

[五行詩]鳴き止まない 鳥を心に 栖まわせて 三十年来 共生している

五行詩【クモさん】

[五行詩]クモさんよ 目の前で 降下してくれるなよ せめて 顔はやめような

五行詩【入力ミス】

[五行詩]入力ミスが 多くなっています 機械に 叱られながら 詩を書いている

五行詩【蚊取り線香】

[五行詩]懐かしむつもりで つけたら 蚊取り線香って こんなに 目にきたっけかな

五行詩【一病息災漢】

[五行詩]いつのまにか 年を取ったと 思えるほどに 生きたのだな いちびょうそくさいかん

五行詩【わたしもー】

[五行詩]みぎー うえー ひだりー したー よこー 言いまちがうー ごめんなさーい わたしもー

五行詩【ラップ】

[五行詩]カタ、ヒジ、ヒザ! 塗る軟膏は アズ、リン、へパ! ラップみたいに 今日もナースが歌う

五行詩【うたた寝】

[五行詩]経管栄養を 入れながら うたた寝する 特技だな 安心している

五行詩【手が冷たくて】

[五行詩]手が冷たくて ごめんね 脈をとられて そんなに 嫌でもない冬

【五行詩】閃輝暗点

[五行詩]閃輝暗点 やりすごしながら 明日の 悩みを 持ち続けてる

五行詩【音だけになる】

[五行詩]呼吸器の 音だけになる 月夜か 眼が 冴えている

五行詩【ジストロフィン】

[五行詩]四十年を生きて 初めて 知ったことを 希望としたい ジストロフィンDNA検査

五行詩【初めて】

[五行詩]この歳になって 初めてなのがいっぱい あるなんて 悪いことでは ないかもしれないな

五行詩【病者の衣】

[五行詩]思い切って 肝心を話した 病者の 衣をはずし フラットになって

五行詩【カルマ】

[五行詩]障害を カルマのせいだと 説く君の 顔を見ている 目を見ている

五行詩【病人】

[五行詩]病人であるのは 後ろ向きに思っていたが 違った 生きるためにこそ 病人であれ

五行詩【ゆだねてゆだねず】

[五行詩]なにもかも 一人で引き受けなくても よかったのだ ゆだねてゆだねずの 新たな 道

五行詩【ただのミノリー】

[五行詩]ぼくは スーパーマンに なれないよ ただの ミノリーだよ