五行詩【鶴】

[五行詩]折られて 折り重ねて 立ち上がれ 隠れた わたしの鶴

五行詩【鶴】

[五行詩]折られて 折り重ねて 羽を広げ 倒れない あなたの鶴

五行詩【坐っている】

[五行詩]座っている鑑真 一人で 世界に対している 今にもぐほうに おもむくかのように

五行詩【花の心よ】

[五行詩]好きな人と いつだって 月を見ればいい 千年変わらぬ 花の心よ

五行詩【歌に】

[五行詩]話さなければよかったと もう言わぬ 二度と言わぬと 泣いたなら 歌にすればいいじゃないか

五行詩【空白】

[五行詩]自分で時を 空白にしてるのじゃないか 戻らず 先走らず 今を生きていく

五行詩【曇り】

[五行詩]いじけて しぼんでいくのが 曇りなんだ 自分に のろしを上げよう

五行詩【生きてきた】

[五行詩]残された 人は 生きてきた 言葉にはしない 挽歌

五行詩【いきなり渦中】

[五行詩]生きることは 選択というより いきなり 渦中 泳いでいくだけだ

五行詩【ならず者】

[五行詩]地獄に落ちると 脅す者こそ この世の ならず者 立ち去りなさい

五行詩【二十年後】

[五行詩]不確かな未来に 挑んだことは むだではなかったと 二十年後に 生きていよう

五行詩【今日が命日】

[五行詩]伊藤野枝の本を 手にして 今日が命日なのを 知った 火は弱った心にも

五行詩【怪物】

[五行詩]押し寄せる波を見抜け この空しさは おそれは 疑心は 生きた心を沈める怪物

五行詩【にじむ】

[五行詩]言葉は ずるく用いると すぐ 分かります にじむのです

五行詩【更新】

[五行詩]届かない言葉に なっている 分からない言葉に なっている 更新しなくてはならない

五行詩【恐れる】

[五行詩]恐れることの 質が その時に変わった あなたを 愛している

五行詩【一人立つとき】

[五行詩]誰でもそうなんだ 世界に対して一人立つとき 火がもえる 生きているんだ そこから見えるあなたの灯火(映画 ボヘミアンラプソディを見て)

五行詩【拠る】

[五行詩]言葉に 揺るがされたら 言葉に よって 身を支える

五行詩【本音】

[五行詩]本音という名の 暴言があり 本音という名の しんぎんがあり 一瞬で見抜かれる

五行詩【握るのは】

[五行詩]命綱を握るのは どこまでも自分である 無力を転じる 生き抜く力 明け渡さない